真備の笑顔のために

倉敷市真備支え合いセンターの今 Vol.3 〜災害発生時から3年半の変化〜

2022年3月11日

全地域 活動報告

平成30年7月豪雨災害から3年半以上経ちました。生活環境が整っていくのを嬉しく感じたり、更地になった場所を見て寂しく感じたり、さまざまな感情を持ちながら日々を過ごしているのではないでしょうか。

 

真備支え合いセンターでは、現在も真備地区で被災されたみなさんのサポートをおこなっています。職員から見た3年半の真備地区のみなさんの心境変化を、真備支え合いセンターのセンター長 佐賀雅宏さんに話を聞きました。

活動当初に多かった、不安や不満の声

真備のまち

-“見守り連絡員”の活動は、災害が発生した3か月後から続けていると聞きました。当時について、印象に残っていることはありますか?

 

佐賀:

活動当初は、不安や不満を聞かせてもらうことが多かったな、と思い出します。私たちは災害が起きた3か月後に活動をスタートしました。背景としては、住み慣れた地域を離れて知り合いも少ないなかで「孤立したり悩みを抱えたりしてしまうかたが増えるのではないか」という心配があったからです。「お困りごとがあれば、制度を使ったり相談機関につないだりしたい」との思いで活動を始めました。

 

もちろん、お困りごとを制度や相談機関につないで解決できたこともありました。

 

ただ実際は、それどころではなかったですね……。「来たんなら聞いてえや」と言って話される内容は、多くが不安や不満でした。また最初は不審に思われているかたも多くて、話すことすらむずかしい場合もあったんです。

 

今考えてみると、当然だと思います。災害が起きたショックとともに、「これからどうしよう」とみなさん先が見えなかった時期でしたからね。

 

不安が大きいにもかかわらず、感情をどこにもぶつけられなかったかたが多かったです。当時はみなさん不安でしたから、誰かに話したくても話しづらい状況でした。さらに家族や友達に“不安を感じる姿は見せたくない”と思うかたもいて、心の内がなかなか整理できないような……と感じていたのを覚えています。

 

だからこそ、「まずは話をしてもらおう」という思いで、見守り連絡員の活動をするようになりました。私たちは話を聞くとき、“寄り添う姿勢”を大切にしています。「不安や不満を聞いてくれる」と思ってもらえる存在になりたかったですね。

変化を感じ始めたとき

-お聞きするお話の内容が「変化してきた」と感じた瞬間はありましたか?

 

佐賀:

少しずつですが、みなさんの気持ちが変化しているなと思ったのは、住む場所が決まりはじめた頃ですね。人によってタイミングは違うものの、家の再建方針が決まってくると表情が変わっていった印象です。柔らかくなっていくと言いますか。不安は消えないものの、どこか安心感を持っていたのだろうなと思います。

 

あとは変化というか、ありがたいなと思ったことがあります。「支え合いセンター」という存在が、みなさんのなかに浸透してきたことですね。災害直後は、訪問してもドアを少ししか開けてもらえなくて、怪訝な顔をしていたかたが何名もいらっしゃいました。でも「真備から来ました」なんて声をかけて、少しずつ信用していただいたんですけどね。

 

何度か足を運んでいると、怪訝な顔をされていたかたもドアを全開にしてくださるんですよ。「心を開いてくださったのかな」と思える瞬間でした。住民のみなさんから「あー、支え合いの人ね」と声をかけてくださり、いろいろお話ができるのは嬉しいなと思っています。

 

今後も信頼しつづけていただけるよう、“寄り添う姿勢”を大切にしたいですね。

現在は家の進捗の話が多いですね

真備支え合いセンターのセンター長 佐賀雅宏さん

-訪問する頻度は、災害発生時から変化していますか?

 

佐賀:

そうですね。発災当初は、高齢の一人暮らしや高齢者だけの世帯、障がい者のいる世帯、単身世帯など、孤立が心配される世帯を優先的に訪問していました。一方で、できるだけ早く全世帯を訪問したいという思いで、毎日訪問を続けていました。

 

訪問の頻度は、世帯によって違いましたね。健康面や孤立が心配される世帯には頻繁に訪問していましたし、落ち着いて生活を送られている世帯には、少し期間をあけながら訪問していました。

 

また、住まいも再建され、困りごともなく落ち着いた生活をされている世帯については、こちらから積極的に訪問することは控え、ご相談があればすぐに対応するという方法に変えています。最近は訪問世帯も訪問頻度も徐々に少なくなってきています。

 

今は家の進捗について話をされるかたが多いですね。次の生活に向けて順調に進んでいるかたもいれば、新型コロナウイルスなどの影響で少しずつ遅れているかたもいます。家の工事契約ができて、生活の再建が進んでいるように見えても、まだまだ時間が必要だなあと思うことも多いですね。

 

2022年7月で、平成30年7月豪雨が起きてから4年目に入ります。節目の時期って、当時の記憶がフラッシュバックしやすいタイミングでもあるんですよね。たとえ家が再建できても、心に抱えているものはなかなか消えないのかもしれません。私たちはこれからも、みなさんをサポートしていきたいと思っています。