真備の笑顔のために

まちづくり推進協議会に聞く薗地区の様子Vol.2 〜三世代交流を通して、繋がりを増やす〜

2023年3月10日

活動報告

平成30年7月豪雨災害から4年半が経ちました。真備のなかでも薗地区では、コミュニティづくりの一環として三世代で参加できるイベントが復活してきています。

 

一方で、目には見えない心の傷が癒えない方々は、想像以上に多いのかもしれません。

 

「パッと見は戻ってきたなと思う反面、災害での痛手は癒えていないんだなと多々思う」

 

そう話すのは、薗地区まちづくり推進協議会会長の中山悍慈(なかやま かんじ)さん。

 

4年半経った今の薗地区の様子や今だからこそ感じること、今後取り組みたいことなどを、副会長の武本堅(たけもと かたし)さん・防犯防災班班長の森宗元己(もりそう もとみ)さんとともに伺いました。

 

忘れたような顔をしているけれど

薗地区

 

―災害から4年経ちました。現在の薗地区の様子を教えてください。

 

森宗:
災害時に一度は薗を出た人も、8割くらいは戻ってきましたね。でももう家や土地を手放している人もおられるし、元には戻らないでしょうね。更地が多くて、爪痕がまだ残っているなと思います。

 

中山:
パッと見は戻ってきたなと思う反面、災害での精神的な痛手は癒えていないんだな、忘れたような顔をしているけれど傷は残っているんだなと思うことは多々あります。

なかには川辺橋を渡ることさえも嫌だ、渡りたくないという声もあると聞きます。被災した場所は同じなのに、感じることは人それぞれ違うんだなと実感しました。

 

自然に敬意を払い、住民同士声を掛け合うまちづくりを

薗地区

 

―災害発生時を振り返って、今思うことはありますか?

 

中山:
晴れの国岡山で、とくに真備町という場所で、誰も予想していなかった水害が起こるのはどういうことなのか。自然は何を言いたいのかなと、そればかりを考えています。

 

正解はわかりませんが、きっと生活の仕方を地球レベルで考えて、昔の人が山や川に敬意を払っていたように我々も同じ気持ちを持つべきなのではないか。生活のなかでもっと自然に敬意を表すべきだと気づけたという意味で、災害が起こったのかなと個人的には思っています。

 

森宗:
私の近所でも十数名亡くなった方がいて、尊い命が奪われたのはなぜなのかな、と。これからまちづくりとして何ができるのかなと考えています。

 

今から私にもできることがあるとするなら、薗に住む人たちの繋がり作りですね。有井は昔、村だった集落があって、その周りに新たな住宅団地があります。昔から住んでいる先輩方に、新しく住みはじめた方を受け入れてもらうとか、どこに誰が住んでいるかわかるようにするとかをしていきたいなと思います。

 

武本:
私は年代ごとの壁をあまり感じませんが、挨拶をするとか、声を掛け合うとかは個人差がありますよね。なのであまり意識しすぎず、イベントなど何かあれば誘うし、声を掛け合える付き合いを自然にできるような、まちづくりを続けていけるといいのではないでしょうか。

 

三世代交流イベントが徐々に復活。繋がりづくりを

薗地区

 

―現在のまちづくり協議会では、どのような活動をしていますか?

中山:
災害発生後、7月の第一日曜日を「薗防災の日」と設定しました。新型コロナウイルス感染症の影響でイベントが全然できなくなっていましたが、2022年にようやく、3年越しに初めてのイベントができました。

 

森宗:
薗小学校の運動場と体育館で、人数制限を設けながら開催しました。火起こし体験や消火器の体験、被災体験の発表会や講演会などができましたね。飾り棚に防災備品を入れて展示したり、ハザードマップを書いたパネルを展示したりもしました。飾り棚やパネルは、倉敷市真備公民館薗分館にそのまま展示しています。

 

薗地区

 

中山:
あと2022年は「三世代ふれあい夏祭り」を4年ぶりに開催できました。

 

薗は「三世代ふれあい」との名が頭に付く三大イベントがあるんです。夏祭りと、体育祭、文化祭。昔から多世代交流が盛んな地区なので、やっぱりいいなあと思いました。

 

武本:
薗は、地域で子どもを育てると考えている地区です。学校行事にもまちづくりが関わっているし、三世代で交流する姿は本来の薗に戻ってきているのかなと思います。

 

「薗はいいよね」と思える発信を続けたい

薗地区

 

―最後に、あらためて薗地区の魅力や感じている課題などメッセージをお願いします。

中山:
先ほども言ったように、薗は団結力があることがいいところです。これはずっと受け継いでいきたいですね。課題は、人手不足かな。役員の高齢化が進んでいるのもそうですが、災害後真備に戻ってこなかった人たちを思うと、やはり残念だなあと思いますね。

 

武本:
真備で起きた災害は、どこでも起きる可能性があります。そのうえで、今の真備は堤防などが多くできているので、以前よりは安全なのかなとも思うんです。個人的には「戻ってきても大丈夫だよ」というPRをしています。

 

森宗:
薗は、いいところですよ。子どもたちが素直で、元気よく挨拶してくれるというのは昔からいいなと思っています。子どもを育てるにはいい環境です。

 

薗を離れた人にも「薗っていいところだよな」と思い出してもらえるような活動をしていくのが、私たちの役割だと思います。「戻っておいで」「帰ってきたらいいよ」というのが、伝わるといいですね。